北陸富山県支部
平成24年7月2日から7月6日の4泊5日の日程で、台湾で1999年(集集)地震で発生した大規模地すべり地や地震記念館等を視察してきました。場所は台湾中央部であり、交通の便の関係から、実質2日間の視察でした。
視察参加者は、富山大学大学院竹内章教授、支部会員各社から村尾于尹支部長をはじめ総勢17名でした。現地では、中華防災学会理事の王文能博士に、地震発生直後から現在に至るまでの経緯等多肢にわたって説明いただきました。
主な視察箇所は、図-1に示す4箇所であり、それぞれの箇所について、報告します。
図−2に示すように、幅2km、延長2kmの地すべり規模で、南西側にすべり落ちており、斜面脚部の河川を通り越して、対岸の斜面に乗り上げている。(発生当初は、大きな堰止湖を形成したが、その後の土砂流出で埋積された。)
発生から13年を経た現在では、河川での下刻が進み、河川沿いに大きな崩壊地形が連続しており、河川に土砂供給している状況でした。
鮮新世の砂岩、泥岩が流れ盤構造で分布する斜面であり、地震発生前は斜面下部にて後退性の地すべりが幾度となく発生していた斜面であり、地震動により、山頂部から斜面全体が活動したものである。
私たちが行った時には、写真に示すように植生に覆われていましたが、規模の大きさに驚かされたと同時に、地すべり斜面全体をGeoparkとして、斜面での対策工事は一切行なわず、下流部での砂防工事のみだとのことであり、驚きました。
九分二山地すべり地は幅1.5km、延長1.5kmの規模で、南東側へ流れ出た斜面であり、斜面脚部の谷を埋め、対岸に乗り上げている。堰止湖が2つ形成されている。中新世の砂岩泥岩が流れ盤状に分布している。元は斜面中腹に有った祠が、そのまま運ばれて、対岸部に鎮座していた。その付近のビンロウ樹には、直立木として、変動時の記録を示す幹曲りが見られた。
ここでも、地すべり斜面全体をGeoparkとして、公園整備は行っているが、対策工事は一切行なわず、下流部での砂防工事のスリットダムのみだとのことであった。
現地では、「集集地震」ではなく「921地震」と命名して、校舎が破壊されグラウンドに段差が生じた台中県霧峰郷光復中学校を地震記念館とし、これを含めて、自然災害の知識教育や防災教育のための教育施設として整備し、2007年9月に完成し運営している。
壊れた校舎や変位したグラウンドそのものを展示していた。
館内では、博物館専属の日本語解説員・黄嘉慧さんから地震について分かりやすく説明を聞きました。
石岡ダムでは、地震によりダムが隆起し、右岸部が破損したと同時に、下流河川では断層崖が発生し、滝を形成した。
今回の視察は、地震による地すべり災害やダム災害の状況を現地で見てきました。また、921地震教育園區(博物館)では、地震で体験したり、減災できる仕組みなど地震について学んできました。
この視察で得た貴重な体験については、会員はもとより、広く県民に伝えるとともに、これを教訓として、今後とも防災事業の必要性を訴えることが重要であると考えています。
このため、視察の報告については、2013年2月に開催予定の「斜面防災対策技術講習会」で発表することにしています。講習会の日程については、協会支部のホームページで案内いたします ので、皆様の参加をお待ちしています。