一般社団法人斜面防災対策技術協会 富山支部
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アイスランドの地熱発電と地質関係調査結果報告

はじめに

 平成28年10月14日から10月21日までの8日間の日程で、北欧アイスランドの「地熱発電の取り組み」と「地球の割れ目」といわれている「ギャウ」や間欠泉などの地質などを調査してきました。
 参加者は、竹内章富山大学名誉教授、支部会員から村尾于尹支部長をはじめ10名でした。

地熱発電

地熱発電の取り組み

 富山県では、県内の地下に眠る地熱資源量は北海道に次ぐ全国2位のため、2016年度から調査費を計上して事業化の可能性を調査しています。

<地熱発電とは>
 地球の内部は高温であり、一般に深さ30~50キロメートルで1,000℃程度と考えられています。火山や温泉がある地熱地帯では、深さ数キロメートルという比較的浅い地下の断層に、1,000℃前後のマグマ溜りがあります。このマグマ溜まり付近まで浸透した雨水などの地下水は、加熱されて高温•高圧の地熱貯留層を形成しています。この熱水をエネルギー源とするのが地熱発電です。その仕組みとしては、地熱蒸気を直接タービンに導入する方法と、蒸気や高温水を熱交換器に導き、熱だけを回収して利用する方法があります。
 地球内部で発生する自然エネルギーを利用し、地上で燃焼させることがありません。そのため、CO2(二酸化炭素)の大気への排出が少なく、地球温暖化防止に有効な発電方式です。また、地熱の源泉である地球内部の熱エネルギーは膨大かつ無尽蔵で、枯渇する心配がほぼありません。さらに、太陽光発電や風力発電といった他の自然エネルギー由来の発電方式と比べ、天候に左右されることがなく、火力発電とほぼ肩を並べる高い稼働率もメリットの一つとされています。

 このような富山県の取り組みがあるため、世界第2位の規模で国内1位の規模を持つアイスランドの地熱発電「ヘトリスヘイジ地熱発電所」を視察しました。

 「ヘトリスヘイジ地熱発電所」は、地下3,000mからボーリングによって蒸気を取り出し、それによってタービンを回すことで発電しています。2006年、三菱重工製の蒸気タービン2基で電力生産を開始し、2007年には、東芝製の低圧蒸気タービンが追加され、現在国内最大規模の25万KWを発電しています。
 2010年には、熱水プラントが導入され、現在133メガワットの湯を生産し、約20km離れた首都レイキャビックに電力と温泉水を供給するとともに、道路消雪にも広く活用しています。

ヘトリスヘイジ地熱発電所

ヘトリスヘイジ地熱発電所

ヘトリスヘイジ地熱発電所の館内

ヘトリスヘイジ地熱発電所の館内

地熱発電の関連施設

 「ブルーラグーン」(アイスランド語:青い潟湖)は、アイスランドにある温泉施設で、自然に湧出する温泉ではなく、隣接する「スヴァルスエインギ地熱発電所」が地下2,000mから汲みあげた地下熱水の排水を再利用した施設です。1970年代後半に地熱発電の副産物として作られ、1987年から温泉浴場として一般公開されるようになりました。排水は70度以上あり、それを38度前後に温度調節して利用しています。
 温泉面積は約5,000㎡(競泳用50mプール4個分)を誇り、露天風呂としては世界最大で、温泉施設を一周するだけで10数分かかる程の広さでした。(深さは最深部1.4m程)白濁した温泉水には高い皮膚病治癒の効果があり、欧米各国からも多くの観光客が訪れていました。

ブルーラグーンの全景

ブルーラグーンの全景

ブルーラグーンの正面

ブルーラグーンの正面

アイスランドの地質

「地球の割れ目」の「ギャウ」

 「地球の割れ目」の「ギャウ」は、シンクヴェトリルにあり、アイスランドの国立公園地域、ユネスコの世界遺産にも登録されています。シンクヴェトリル付近には、太平洋中央海嶺の地上露出部分があって、ユーラシアプレートが東に北米プレートが西に広がっています。
 このため、シンクヴェトリル各地で「ギャウ」と呼ばれる大地の裂け目が見られ、独特な岩肌を眺めることができました。
 現在、地上でこの「ギャウ」を見られるのは、ここアイスランドとアフリカのみとなっています。

国立公園の全景

国立公園の全景

地球の割れ目

地球の割れ目

間欠泉

 ストロック間欠泉は、アイスランドを代表する間欠泉です。
 ストロック間欠泉は、現在は不定期な噴出となってしまったものとは違い、ほぼ5~10分おきに噴出し、沸騰した熱湯を20m上空まで噴き上げています。かつては温泉水を70mまの高さまで噴き上げていました。2000年に起きた地震をきっかけに活動が再開していますが以前ほどの吹上頻度ではなくなっています。 

ストロック間欠泉の全景

ストロック間欠泉の全景

国立公園

 ヴァトナヨークルト国立公園は、火山活動と氷河という自然環境が作り上げた独特の景観が広がる国立公園です。
 ヨーロッパ最大の氷河で、総面積8,100k㎡とアイスランド国土面積の8%を占めています。氷の厚さは約400mでした。
 氷河の最南部には氷河湖があり、青く澄んだ湖面には、巨大な氷が浮かんでおり、ダイナミックかつ幻想的な風景が広がっていました。
 また、氷河から溶け出した白濁した水の流れが轟音を立てて落ちていく壮大な滝。黄金の滝を意味するグトルフォスは、冬でも凍らず一年を通して見応えのある壮大な姿を見せてくれていました。

氷河湖の全景

氷河湖の全景

氷河湖の全景

氷河湖の全景

おわりに

 アイスランドの地質は、地質学的にも「地球の割れ目」を直接観察できるとともに、活発な火山活動、氷河など特異な地域であるため、これらの火山・氷河分布地域は世界ジオパークに2011年に認定されています。富山県でも「立山黒部」は2014年に日本ジオパークに認定されていますが、今回の視察を通して、今後世界ジオパークに認定される十分な資質を持っていると感じました。
 今回の視察で得た貴重な体験については、会員はもとより、広く県民に伝える必要性が重要であると考えています。
 このため、視察の報告については、2017年2月に開催予定の「斜面防災対策技術講演会」で発表することにしています。講習会の日程については、協会支部のホームページで案内いたしますので、皆様の参加をお待ちしています。