○主催: | (一社)斜面防災対策技術協会富山支部、富山県治水砂防協会、NPO法人富山県砂防ボランティア協会 |
○後援: | 富山県、北日本新聞社、日刊建設通信新聞社北陸支局、富山県地質調査業協会、(公社)日本地すべり学会中部支部、NPO法人富山県地すべり防止工事士会、グリーンキャスター事業協同組合、立山・神通砂防スペシャルエンジニア、立山砂防女性サロンの会 |
〜講演会の開催結果〜
講演会場には、協会員のほか一般県民、国・県・市町村等の行政関係者、NPO法人砂防ボランティア協会員、立山砂防女性サロンの会員、関係協会など約450名の参加があり、盛会に開催できました。
本講演会は、「土砂災害」に関する様々な情報について、広く県民、行政関係者、防災に携わる企業関係者等がハード、ソフト両面から学び、考える機会となり、今後いざという時の対策や行動に結びつくなど、実りある成果があったものと考えております。
会場全景
開 会 挨 拶 (一社)斜面防災対策技術協会富山支部長 田中 洋一郎
主催者を代表して、田中支部長から「近年、想定を超える規模の災害が毎年のように発生しており、今一度、防災意識を高める必要がある。今日の講演会が事前の防災対策の推進、防災意識の向上、より安全な県土の構築と県民が安心して暮らせる地域の創出に寄与することを祈念する。」と開会の挨拶がありました。
田中 洋一郎 支部長
「土砂災害と対応策の発展」と題して、(一財)砂防・地すべり技術センター 栗原 淳一 審議役((前)国土交通省 水管理・国土保全局 砂防部長)から講演を頂きました。
講演では、近年の土砂災害について、「流木が谷や河道を閉塞させることにより土砂災害の被害範囲が広くなっている。土砂災害は道路よりも鉄道の復旧に時間がかかるのが特徴で、交通への影響が地域経済に大きな支障を与えている。」と解説がありました。
これからの日本の社会について、地球温暖化・人口減少・技術者不足をキーワードに挙げ、「地球温暖化は、様々なことが複雑に絡んでいるのが現状で、砂防との関係も大事になってくる。砂防はもっとまちづくりに積極的に参加したらどうか。まちづくりは面で、砂防は点で考えると噛み合わない部分がある。今後、まちづくりに砂防の専門家が入ることも考えられるのではないか。」と提案がありました。
また、「砂防は、非常に勾配が急で大きな力がかかるため、施設の維持管理がこれから大きな課題になると考えられる。がけ崩れ対策で実施した斜面の吹付工が崩れてしまうと、すぐ下にある人家に被害が出る。ぜひ維持管理について考えていかねばならない。」と今後の施設管理について、具体的に分かりやすく講演していただきました。
栗原 淳一 氏
当協会富山支部では、平成25年度から国土交通省立山砂防事務所の協力を得、斜面防災の重要性を知ってもらうため、常願寺川流域の小学生を対象に直接カルデラ内で防災事業等を体験する勉強会を企画しています。
今年度は、立山町立利田小学校6年生を対象に、昨年8月に事前学習として立山砂防の話、9月3日に立山カルデラ体験学習、10月に事後学習をしてもらいました。今回、その学習の成果を47名の生徒一人一人から元気よく発表して頂きました。
立山砂防からの話では、立山を源流とする常願寺川は、160年前の大地震により上流部で土砂大崩壊を起こし、その後暴れ川となって富山平野に大きな災害が発生するようになったことを知ったそうです。
また、カルデラの体験学習会では、「白岩砂防堰堤は、大量の土砂が流れ出さないための重要な役割があり、砂防計画の土台となる砂防施設で、重要文化財に指定されている。」、「砂防工事の期間が6月から10月までの5か月の短期間で、約300名の工事関係者が水谷村に寝泊まりして作業されている。」、「砂防工事の資材運搬などにトロッコが必要である。」などを学習したとのことです。
最後に、「立山カルデラの砂防は、素晴らしい知恵と日夜汗を流している人たちの努力が、災害から私たちの安全な暮らしを守っていることに気づきました。また、私たちは、先人の方々の思いを受け継ぎ、大切な立山をいつまでも残していきたい。改めて、故郷に誇りを持つことができた。」との感想をいただきました。
利田小学校 6年生47名
立山砂防女性サロンの会 副会長の 関澤 美保子氏 からは、「熊本・阿蘇の被災地を訪ねて」と題しまして講演を頂きました。
立山砂防女性サロンの会では、2004年以来、毎年、国内外の災害地研修を実施されており、今回は、平成28年4月に熊本県熊本地方で発生した地震災害地を調査されました。調査は、阿蘇大橋地区大規模崩壊現場で、国土交通省九州地方整備局 熊本復興事務所から、災害時の状況と復旧状況の説明を受けられました。その後、坂梨地区土砂災害現場と復旧が進む熊本城の視察、阿蘇火山博物館で阿蘇火山の噴火の歴史と現状について視察されました。
また、被災地の熊本市長さん、阿蘇の未知(みち)を考える女性の会の皆さんとも交流をされ大変有意義な研修であったと説明して頂きました。
関澤 美保子氏
当協会富山支部では、昨年9月に竹内 章 富山大学名誉教授を調査団長として、北海道胆振東部 地震災害地を視察しました。
視察では、胆振東部地震の被災地であるむかわ町の竹内町長さんから災害の概要報告を受けた後、 産業振興課農政グループ長 主幹の東 和博氏から、災害の状況や対応などの現地説明を受けました。その際、東氏から「この災害で学んだことを広く県民に知ってもらいたい」との発言もあったことから、今回、来県していただき、「北海道胆振東部地震災害対応の教訓について」の演題で講演をして頂きました。
講演では、最初にむかわ町の概要について説明があり、被災直後の町役場内の状況、災害対策本部、人的・建物被害状況と公共施設と農業施設の被害などの経済被害の詳細について説明をしていただきました。
また、体験談として、被害発生後において、優先させた対応、事前に必要なこと、早急に行うこと、事前に決めておくことなど、私たちが被災を受けた場合の教訓などについて、講演をして頂きました。
東 和博氏
富山大学の竹内 章 名誉教授からは、「北海道胆振東部地震の地震・地質特性について」について、技術報告をして頂きました。
富山大学の竹内 章 名誉教授からは、「北海道胆振東部地震の地震・地質特性について」について、技術報告をして頂きました。
最後のまとめとして、地質学的な特徴、表層地すべりの地質的要因、被害状況の地域差の要因究明などの詳細について説明をして頂きました。
竹内 章氏
竹内名誉教授の講演を受けて、ダイチ葛Z術部技術課主任の 蛛@伸之氏から、「北海道胆振東部地震災害の復旧について」と題して、技術報告をして頂きました。
内容としては、土砂災害の状況、地すべり災害の状況とその対策、厚真川の災害と復旧・対策状況、吉野地区と富里地区の災害と対策状況などについて、具体的に詳しく説明していただきました。
高柳 伸之氏
次に、今回の調査に参加して頂きました、富山県立大学環境・社会基盤工学科4年の 幅下 大地氏からも、同様の演題で、地震災害の概要、斜面崩壊の発生要因、災害復旧工事について、具体的に状況の説明がありました。
また、むかわ災害復旧計画についても詳しく説明してもらいました。
幅下 大地氏
閉 会 挨 拶 NPO法人富山県砂防ボランティア協会会長 石崎 信夫
石ア会長から、講師並びに多くの参加者に対するお礼と「今後とも継続して講演会を開催し、土砂災害について考えていただけるように努めていきたい。」との挨拶があり、閉会しました。
石崎 信夫 会長
講演会終了後は、講演を頂いた講師を囲み「講師を囲む会」が開催され、多くの方に参加を頂きました。予定していた時間もあっという間に過ぎるなど、有意義に懇談して終了することができました。
会場では、北海道胆振東部地震災害、西日本豪雨災害、常願寺川の昭和44年災害、立山カルデラ砂防勉強会をパネル展示し、県民、防災関係者など多くの方に見ていただきました。
パネル展示