当協会では、平成23年9月の台風12号による災害で、紀伊半島のいたるところに大規模な斜面崩壊、河道閉塞を引き起こした災害箇所について、被災翌年の平成24年12月に、調査団を組織し現地調査を行っており、今回はその後の復旧状況を調査するものであります。
調査は、竹内章富山大学名誉教授を団長にして21名の団員で、令和3年 11月9日(火)~11日(木)日程で実施しました。
この調査には、富山県立大学・社会基盤工学科の学生2名にも参加していただきました。
平成23年の台風12号により、紀伊山地では8月30日から9月5日までの総降雨量が広い範囲で1000ミリを超え、3000か所を超える斜面崩壊、河道閉塞が発生し、82名の方がお亡くなりになり、崩壊土砂量は全体で約1億㎥に達しています。
近畿地方整備局では平成24年4月に、この災害の対策を行うために直轄事業化し、紀伊山系砂防事務所を設置されました。
現地調査は富山から大型バス1台により早朝出発し、現地の工事用道路で復旧現場まで乗り込み、実施しました。
現地の案内は、国土交通省 近畿地方整備局 紀伊山系砂防事務所の山本事務所長様が自らバス車内での概要説明、現場での復旧状況のご説明を丁寧に行っていただきました。
崩壊直下に集落があり、被災当時は長期に渡り避難生活をされていました。
早めの避難を行ったため、人的被害は無く、河道閉塞も確認されましたが、さほど大きな規模ではなかったそうです。砂防堰堤1基完成後、避難生活されていた住民が現地に戻れるようになりました。
現在、斜面上方の土砂を排土している最中で、切土法面には、植生のため種(在来種)を蒔き、ネットを張っていますが、鹿(奈良県は鹿の保護が強い地域)がその種を食べに来るため、鹿が施工箇所に入ってこないように工夫されています。
排土は村に斡旋してもらった置場に運搬されており、地中に地下水が少ない(調査ボーリングで確認済)ため、地表面排水工のみの施工で地中の排水工事は併設していないとのことです。
今回の災害地調査では、豪雨災害の恐ろしさと、災害に備えるソフト・ハード面での防災対策の重要性について身を持って感じました。
この調査で得た貴重な体験については、会員はもとより、広く県民に伝えることが重要であると考えています。
この現地調査の結果については、来年2月8日(火)に富山市で開催します斜面防災対策技術講演会で発表することにしています。